公立大学法人 奈良県立医科大学脳神経外科

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・てんかん外科専門外来

「てんかん」は、脳の異常・過剰な活動が起こる事で、突発的に様々な症状(てんかん発作)が繰り返して起こる病気です。その原因は大脳の皮質形成異常、脳腫瘍、脳卒中、頭部外傷、遺伝子異常など多岐にわたり、症状自体も1人1人違います。赤ちゃんから老人まで起こる可能性があり、100人に1人の割合で発症する頻度の高い神経疾患です。
約7割のてんかん患者さんは、抗てんかん発作薬でてんかん発作を抑制する事ができますが、残りの約3割の患者さんは、複数の抗てんかん発作薬を適切に服用しても発作が抑制されない、薬剤抵抗性てんかんに苦しんでいます。

繰り返されるてんかん発作は、正常の脳機能に悪影響を及ぼし、記憶機能や言語機能が低下したり、てんかんそのものを悪化させる可能性があります。特に小児の薬剤抵抗性てんかんは、正常発達を妨害して精神運動発達遅滞を引き起こす可能性があります。そのため、薬剤抵抗性てんかんの患者さんに対しては、てんかんの原因を早期に発見し、外科治療を含めて早期に適切な治療を行うことで、てんかんによる脳障害を防ぎ、生活の質(QOL)を高める事ができます。

どのような患者さんがてんかんの外科治療を受けるか

日本のてんかん診療ガイドライン(2018)などを参考にすると、おおまかな基準として以下のようなものが挙げられます。

・適切な薬剤治療を行っても1~2年以上てんかん発作が抑制されない。
・てんかん発作が改善すればQOLを上げる事ができる。
・外科治療で大きな後遺症が生じないと予測される。
・患者さんやそのご家族さんが外科治療の必要性をよく理解している。

※正常な発達が抑制されてしまう可能性のある子どもさんや、海馬硬化症や脳腫瘍など外科治療を急ぐ、もしくは効果が期待できる症例は、1~2年を待たずに積極的に外科治療を進めていく事もあります。

てんかん外科治療の種類

2024年4月の時点で、本邦で行えるてんかん外科治療は以下のものがあります。なお当科においては乳幼児症例含め、原則以下の全てが施行可能です。

1 -根治的外科治療:発作の消失を目指す。
・側頭葉切除術(前内側側頭葉切除、選択的海馬扁桃体摘出術)
・てんかん焦点切除術
・半球離断術
・多葉切除、離断術

2 – 緩和的外科治療:発作頻度を軽減して、QOLの向上をはかる。
・脳梁離断術
・迷走神経刺激療法(VNS)
・脳深部刺激療法(DBS)
・軟膜下皮質多切術、海馬多切術

3 -その他:主に根治的外科治療の評価目的に行います。
・慢性頭蓋内電極留置術
・定位的深部電極留置術

てんかん外科治療の進め方

適切な薬剤治療を続けても難治に経過する場合、非侵襲的な検査などで手術適応について評価します。おおまかな流れは図に示していますが、まずは根治的外科治療(焦点切除術)の可否を評価します。この段階で根治的外科治療の適応外と判断されれば、緩和的外科治療の施行を検討します。根治的外科治療の適応があると判断できれば、そのまま焦点切除術に進む場合と、頭蓋内に直接電極を留置して頭蓋内脳波モニタリングを行ったうえで焦点切除術に進む場合があります。

昭和35年の開設以来続く「てんかん」の治療実績

奈良県立医科大学脳神経外科は、昭和35年の開設以来一貫して、てんかんの研究・診断・治療を教室のひとつの柱として、積極的に推進してきました。特に薬剤抵抗性てんかんに対する外科的治療は、約30年の歴史があります。その蓄積された経験に基づいて、1人1人の患者さんそれぞれに異なる病態を持つというてんかんの特殊性に対して、1人1人が最善の治療結果を得られるために、緻密な診断と、綿密な治療計画、繊細な手術手技でもって治療にあたります。

また、てんかん治療は脳神経外科だけで完結できるものではなく、当院の小児科、精神科、脳神経内科、コメディカルの方々と協力し、多職種で最善の治療を目指します。特に小児科とは密に連携をとった上で、乳幼児に対するてんかん外科治療も積極的に行っています。
なお当施設は日本てんかん学会認定施設です。加えて独立行政法人国立病院機構奈良医療センター てんかんセンターとも連携して、奈良県のてんかん地域診療連携の一端を担っています。

<当科で行っている主なてんかん手術(年間約25件)>

内側側頭葉てんかん手術(選択的海馬扁桃体摘出術・海馬多切術・前内側側頭葉切除術) 皮質てんかん手術(焦点切除術・軟膜下皮質多切術(MST)・前頭葉離断術・後頭葉離断術・多脳葉離断術) 大脳半球離断術 脳梁離断術 迷走神経刺激療法(VNS)慢性頭蓋内電極留置術(脳機能マッピング)

<受診方法>

てんかん外科専門外来は、毎週火曜日です。原則紹介状をご持参ください。

※治療を急ぐ必要のある患者さんはこの限りではありません。必要に応じて担当医が紹介内容を確認して、柔軟に対応します。
初診の患者さんは、脳神経外科外来へお電話で予約をお取りください。
診療をスムーズに進めるため、かかりつけ医の紹介状や検査データ(採血、脳波、MRIなどの画像データ)を持参していただくことが望ましいです。

なお、セカンドオピニオンをご希望の方は、セカンドオピニオン外来にお申し込みください。
ご不明な点やご質問があれば、脳神経外科外来へ電話でお問い合わせください。
(電話番号:0744-22-3051 内線3320 又は 3321、電話受付時間:午後2-4時)

<担当医>

佐々木亮太 診療助教(日本脳神経外科学会専門医、てんかん専門医、日本臨床神経生理学会専門医(脳波)):火曜日担当

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