憧れのParis −Hôpital Necker-Enfants maladesを訪れて
小谷 有希子
同門会の先生方におかれましては,日頃よりご指導賜り,また,昨年に引き続き,今年も投稿させていただく機会を賜りましたこと,重ねて御礼申し上げます。今回は,昨年夏に訪問させていただいたFrance, ParisにあるHôpital Necker-Enfants maladesのご報告をさせていただきます。
今回の訪問は,なんと前回ご報告させていただいた1月の新年会がきっかけで,実現したものでした。研修医時代に一人旅をして以来,Parisという街に憧れを抱いていました。准教授の朴先生から小児神経外科を勧められていたこともあり,ある日,医局長の本山先生に,「Parisで小児だったら,Neckerという病院があるよ」と教えてもらいました。以来,漠然と留学するならここがいいと思っていました。
2013年1月,藤田保健衛生大学の加藤庸子先生が新年会の特別講演に来られた際,お食事をご一緒させて頂くことができました。たまたま将来の留学のお話が出たので,いつかNeckerに留学したいと思っていることをお話し申し上げたところ,ご存知の先生がいらっしゃるとのことで,あっという間に話が進み,7月に1週間手術見学に行くことになりました。これには,正直,中瀬教授も私もびっくりで,当初4月から県立奈良病院へ異動することが決まっていたので,どうしたものかと悩みました。ですが,飯田部長にもご快諾頂き,せっかくの機会だからと,思い切って行かせて頂きました。
7月某日,小児神経外科の殿堂と崇めてきたHôpital Necker-Enfants malades に行って参りました。加藤先生のお知り合いの先生というのはFederico Di Rocco先生といって,実は朴先生が留学していたローマ・カトリック大学のBossの息子さんであり,新婚旅行で日本に来られたときに面識があったそうです。そんな不思議なご縁を感じながら対面を果たし,朝のカンファレンスへ行くと,覚悟していた通り,会話はall Frenchで,挨拶程度の勉強では敵いもしませんでした。気を取り直して,手術見学へ行くと,午前中横で2件,午後横・縦で3件といったように毎日,珍しい小児の手術症例が続きます。ヨーロッパということで,やはりcraniosynostosisの症例が多く,見学しながら,うちではこうやっていたけど,違うなということがたくさんあって,最後まで目が釘付けになっていました。レジデントの先生達はとても忙しそうでしたが,明るく親切で,私の目には光り輝いて映りました。ロシアからも見学のドクター達が来ていたので,何かと同行できたのもluckyでした。月曜日から金曜日までカンファレンス,手術見学,回診,救急当番と,院内中を見学しつつ,朝のコーヒータイムやランチ,夜はレジデント達でカフェに行ってワインというような充実した5日間を過ごすことが出来ました。現在のレジデントメンバーは,イタリア,ブラジル,チリ,中東から1名ずつと多国籍で,回診中もスタッフたちと歩きながら,「あら,私達,今世界中からドクターが集まっているわね」と不思議な現象に気づいて,感動していました。このような世界屈指の施設では,しばしばこういった現象が生じるのだなと,その場に自分も存在できていることに感激を覚えました。1週間はあっという間でしたが,手術を後ろから見学するにはちょうど良かったと思います。レジデントの先生達に助けてもらいながら,土壇場で覚えたフランス語を披露する機会も頂き,親睦を図ることも出来ました。
今後はこの見学を受けて本当の留学に繋げられるかということです。できれば,フランス語を身につけて,レジデントとして働きたいと思いますが,本当にそこまでフランス語が上達するのだろうか。そこまでして行って何を身につけて帰ってくることができるのだろうかと,悩みはつきません。ですが,悩んでいても前に進まないし,自分がどこまで出来るのか頑張ってみたいという気持ちもあり,現在フランス語教室に通っています。(写真にある文法のテキストは松田先生に頂いたものです)。各国に留学されたご経験のある先生方のお話を聞きながら,モチベーションを上げつつ,本業に支障が出ない範囲で取り組んでいきたいなと思います。
最後に,今回,ご尽力・アドバイスいただきました中瀬教授,朴先生はじめ医局の先生方,長期の留守にご理解ご協力いただきました川口院長,飯田部長,内山先生に,この場をお借りして御礼申し上げます。皆様にお世話になったことを無駄にせぬよう,精進して参りますので,今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。